祈り。

先日、知り合いのMさんから、小型の加湿器をいただきました。
それで、冬の、部屋の中が乾燥しがちの日は、加湿器をつける時が
多くなってきた我が家ですが
加湿器がホカホカ言いながら、湯気を出している音を聴いていると
幼い日の自分が甦るのです。

冬の寒い日、小学校から帰ると、私は何時も、家のストーブの前に直行していました。
ストーブの上には決まって、大きな薬缶がのっかっていて
薬缶は、湯気を出しながら、ホカホカ言っていました。
私は幼いころ、あんまり、幸せではない毎日を送っていましたが、
でも、振り返ってみれば、全部、懐かしく、愛おしく、思えてくるのです。
その幼少のころのことを、加湿器のホカホカが、湯気の音が、思いださせて
くれたのです。

私は幼いころ、あの薬缶がホカホカ言うのを
ずっと見つめていました。
貧しくて、あまり、幸せとは言えなかったので
幼い私は、人よりいつのまにか音に、幸せとかを見出していました。
幼い私にとって、薬缶がホカホカ言う、湯気の音は、何よりも
幸せな音で、幸福な情景でした。
薬缶のホカホカは、暖かくて幼い私に、唯一、「幸せ。」を思わせてくれるものでした。
あれから時は過ぎて、私はあっという間に年をとってしまったけれど
加湿器は私に、何か、大切なものを、教えてくれた気がします。

私は子供のころ、苦労をしました。
でもそれが、返って良かったみたいなのです。
子供のころ、苦労をしたお陰で、その分、
私は大人になって、幸いを得ました。

神様は、幼い私が苦労している時から、今日の日まで
いつも一緒にいてくれて、
いつも、一緒にいるだけではなく、私を育て、幸せにしてくださったのです。

私は思わず、「ああ、良かった。」とため息をつくのです。

祈。